生物の分類 −古生物の部屋

生物の分類

はじめに

古生物にしろ,現生生物にしろ,生き物を扱う場合は必ず「種」や「分類」といった問題に触れなくてはならない.

「種」とは何か?

「分類」とは何か?

これは,非常に難しい問題で,未だに解決していない問題である. いったい何をもって種とすれば良いのか?それをどうやって「分類」すれば良いのか?

ここでは,そんなにつっこんだ議論はしないが(そのうち書きたいと思う),まずは簡単に一般的な知識を書きたい.とりあえずは,種の定義,分類階級,5界説,ドメイン説について紹介したい.分類手法などはまた今度.

「種」とは何か?

種の概念において,最も一般的なものはマイアによる「生物学的種概念」である.これは,マイアによって1963年に提唱されたものであり,それ以降,幾度かの改訂が行われているが基本的な概念は変わっていない.

この「生物学的種概念」では,「種は現実にまたは潜在的に交雑しつつある集団の集まりで,他の同様の集まりから自然状態で生殖的に隔離される」と定義されている.

簡単に言えば,交雑できれば同種であり,できなければ別種である.しかし,やっかいなのは「自然状態で」という言葉である.これはすなわち,飼育下で交雑しても,それは同種であるという保証にはならないのである.なんともやっかいである.

しかも,このような定義があっても,なかなか自然状態で交雑してるかどうかを確かめることは難しい.そこで,形態やDNA,生態の観察,発生などを十分に観察して,経験的に「種」を認識しているのが現状である.

古生物学においては,もっとやっかいで,交雑しているかどうかなんて,まったくもって検証不可能である.まあ,そうは言ってられないので,現生生物学者と同じように,形態や生態の観察(推定)などを十分に吟味して「種」を分けている.(当然DNAなどは使えない).

でも,種っていう概念は,きちんと定義されているように見えるけど,そうでもない.というより例外も結構あるのである.例えば,植物などでは平気で雑種が誕生するし,また,無性生殖を行うもの(例えばバクテリア)には,この定義は適用できない.

また,時間軸を入れるとある一時間面では別種であるものが,それより前の時間では同種となっているものがあるはずであり,このように時間軸をとると,すべての生物は交雑可能と言うことになってしまう.このようなことから,種というものは意味がなく,系統だけが意味をもつという人もいる.古生物学においては常に時間軸が入るため,この問題は非常に重要であるが,未だに議論が絶えない.

エルンスト・マイア:Ernst Mayr アメリカの生物学者.生物科学に関していくつもの著作がある.2005年に永眠.

参考文献

Mayr, E. (1963) Animal Species and Evolution. Cambridge, Mass., Harvard University Press, pp.797

3.生物の分類体系

皆さんも知ってるであろうリンネ(Linnaeus)が生物の分類体系の基礎を築いた. しかも1758年である.いやー,ずいぶん昔ですね.まあ,そんなことはさておき,そのときは,界・綱・目・属・種・変種だけを用いた.現在は,界・門・綱・目・科・属・種という分類体系が構築されている.これの分類体系にさらに,超科や亜科といった細分された階級が加わるときもある.

これらの分類体系において,属以上の分類を高次分類と呼んでいる.すべての種は,属に帰属し,属は科に帰属すると言ったように,最終的には界にまで所属する.そして,それらの区分けの基準は,それぞれ定められていて,この形質を持っていれば,○○科といったように決まっている.

リンネ, Carlvon Linnaeus (1707-1778).スウェーデンの博物学者.どうでもいいがスウェーデンのウプサラ大学には"リンネの庭"があるが,その庭に生えている木を伐採して木のしおりが売られている.

4.生物の分類 (5界説)

生物の分類についての説はいくつもあるのだが,一般的に受け入れられているものとして,リン・マーギュリスの5界説というのがある.これは,生物を5つの界に分けたもので,その5つとは,「原核生物界・原生生物界・菌界・植物界・動物界」である.

原核生物界(モネラ界)

シアノバクテリア

バクテリアや藍藻といったもので,細胞膜内に核をもたない生物のことです.一般に非常に小さく,単細胞です.他の界(原生生物界,菌界,植物界,動物界)はすべて核を持っていて真核生物と呼ばれています.

藍藻(らんそう)は,シアノバクテリア(右図)とも呼ばれているのですが,葉緑体を持っていて光合成ができます.細胞がつながっていて糸のように見えるものもあります.

原生生物界

基本的に単細胞生物ですが,細胞が集合した群体をつくるものもあります.多細胞生物ではないものの寄せ集めのような状態です.アメーバやゾウリムシ,放散虫,有孔虫などが含まれます.

菌界

なんだかおどろおどろしい名前ですが,皆さんが良く知っているキノコやカビの仲間です.従属栄養で,他の生物がつくった有機物を摂取します.水虫や酵母と呼ばれているものも菌界に属していますが,これといった共通性がそんなにありません.生殖様式として「接合」という生殖を行うものが多いのですが,菌界のみに特徴的な生殖様式ではありません.

植物界

まあ,植物だね.葉緑体にクロロフィルを含んでいて,精子はむち状鞭毛を前方にもつという特徴を持っています.でも葉緑体を欠いたものや精子の鞭毛のない植物もいます.これらは進化の過程で後で失われたものです.

動物界

我々を含めた分類で,これについては今度詳しく書きたいが,従属栄養生物で多細胞生物であるものですね.海綿動物や腔腸動物,軟体動物,節足動物,扁形動物,袋型動物,環形動物,棘皮動物,脊索動物などがこの仲間です.

5.最近の生物の分類(ドメイン説)

16SrDNA解析によって分子系統図

最近になって,といっても1990年のことですが,これまでのDNAの研究などを元にした系統樹が出されました.それがWooesという人による右の図です.これによると,Bacteria(真正細菌), Archaea(古細菌), Eucarya(真核生物)という3つのグループに分けています.古細菌というのを初めて聞いた人が多いと思いますが,これは,これまでの分類で言うと,真正細菌とともに原核生物になります.それで,この古細菌というのは熱水とか深海とか塩分濃度の高いところなどの結構きびしい環境に生きていることが多い生物で,生物誕生時に一番近い環境で生きているグループだと言われたこともあるけど,真正細菌より我々真核生物に近いグループなのだ.

それで,この古細菌も入れて,3つのグループをそれぞれドメインと言いましょうという風になっているのです.これまでの認識とは違った世界が広がってきました.

6.終わりに

とりあえず,現在の生物の分類はこういう風になっています.最近はDNAの技術の発達によって,いろいろな生物間の比較が簡単に行われる様になってきて,いろいろな生物の関係がわかってきました.

このページでは,今回はここまでしか書いていませんが,どのように生物の多細胞化が進んだのか?そして,どのように現在の生物に至ったのかについてそのうちまとめていきたいです.その前に各種分類手法についてかな.生物の分類って結構面倒くさくて,どうやってそれを分類するかという手法も結構いろいろあって大変なのだ.

しばしお待ちを.