- Dr. Robert G. Jenkins

研究分野

私は,「化学合成生態系」というちょっと変わった生態系を研究の材料としています.

化学合成生態系とは,簡単に言えばメタンや硫化水素などの化学物質をエネルギー源とする生態系のことです(詳しくはこちら).この生態系は,化学合成細菌が一次生産を担っており,彼らに支えられて多くの大型生物も生息しています.

化学合成生態系は,多くの場合,深海底(高圧環境)の硫化水素といった還元物質が多く存在する場所(硫化水素は多くの大型生物にとっては毒で,かつ,酸素を消費してしまうので貧酸素環境になる)に成立します.また,硫化水素が多く出てくる熱水噴出口周辺は,約400℃という高温環境になります.つまり,化学合成生態系は「極限環境」に成立しています.

そのような「極限環境」に生物はどうやって進出していったのでしょうか?そして,そのような環境でどのように進化してきたのでしょうか?これが私の疑問であり,大きな研究テーマです.私は,主に「化石」という過去の「証拠」を元に彼らの進化を解明しています.

【解説】化学合成生態系とは何か?

化学合成群集の変遷

長い地球の歴史の中での,化学合成生態系を構成する大型生物群集の変遷をまとめています.そこにはダイナミックな生物群集の変遷と変動する地球への応答が見え隠れしています.

化学合成群集の群集構造

硫化水素は多くの多細胞生物にとって毒です.また,メタンや硫化水素などは周囲の酸素を「消費」してしまい,還元環境を創り出します.化学合成生物は,そういう過酷な,いわば極限環境に生息しています.彼らは賢く,酸素とメタンや硫化水素を上手に利用しているのですが,その適合範囲が決まっているようです.つまり,メタンや硫化水素の濃度によって生息する(できる)生物が決まっているということが現生生物の研究でわかってきました.私は,地質時代の化学合成生物が,それぞれどの程度のメタン濃度に適応して生息し,現在に書けて進化してきたのかを明らかにしようとしています.

メタン湧水堆積物 〜微生物が作る岩石〜

化学合成群集の進化を解明するのが研究目的ですが,そのためには過去の地質体におけるメタン湧水活動やメタン湧水の広がりなどを推定しなくてはなりません.そこでメタン湧水そのものや,そこで活発に化学反応を行う微生物達が作る堆積構造にも焦点をあてて研究しています.