オウムガイの特徴−古生物の部屋

オウムガイの特徴

先日,といっても,2002年8月のことであるが,研究室にオウムガイがやってきた.フィリピンから航空便で運ばれてきたものである.このオウムガイは遺伝子解析のためにやってきた.

そのオウムガイをしばらく研究室で飼育していたのだが,それが早々にお亡くなりになった.それをしばらくホルマリン,アルコールに漬かっていたのが,このほど解剖されて,今後の比較研究のための材料とすることになった.

ここでは,オウムガイについての簡単な解説と,オウムガイが研究室にやってきたときの様子,オウムガイの解剖の様子をお届けしたい.

オウムガイとは何なのか?

オウムガイは軟体動物門に属する貝殻亜門頭足綱に属していて,この仲間には,イカ・タコ・アンモナイトがある.

外套膜は筋肉質で内部に広い外套腔をもち,体部の前方に足の一部が変化してできた筋肉質の漏斗をもっており,ここからジェット噴流を出して遊泳する.そして,この漏斗の向きを変えることによって移動方向を変更することができる.

オウムガイの詳しい解剖図は右図の通りである.

面白いのは,鰓,臭検器,腎臓,囲鰓腔がオウムガイでは左右2対(つまり合計4つ),イカ・タコ類では1対であり,このことから,オウムガイを4鰓類(しさいるい)と呼び,イカ・タコを2鰓類(にさいるい)と呼ぶときもある.

また,殻は石灰質である.イカやトグロコウイカも石灰質の殻を持っているが,こちらの殻はオウムガイとは違って内殻性(ないかくせい)である.タコブネ(カイダコ)と呼ばれるタコも雌が産卵の時に殻をつくるが,これは,相同のものではなく,別の器官である.

殻の中は隔壁によっていくつもの部屋に仕切られ(この部屋のことを気房と呼ぶ),この部屋の中にカメラル液を出し入れして浮力の調節を行っているようである.このカメラル液の出し入れは,気房を貫通して通っている体管(連室細管)を通して行っている.

ちなみにオウムガイは.フィリピン以南,アメリカ領サモア以西の南西太平洋からオーストラリア南西岸にわたる範囲の亜深海(100m〜700m)にわずかに1属4,5種が分布する.

参考文献:

速水,森(1998):古生物の科学1 古生物の総説・分類,朝倉書店