東京都市大学 地学1 2009.11.05 第8回 特別講義「恐竜時代」


第8回 特別講義「恐竜時代」

今回の授業では,動物学を教えている大橋先生に授業をしてもらいました.脊椎動物の進化について,よくわかったのではないでしょうか.

大橋先生からのコメントで「全体的に早口な講義になってしまってすみませんでした。」だそうです.私もいつも早口ですが,なぜ授業では早口になってしまうのでしょうか.それとも普段から早口なのでしょうか.

大橋先生,講義どうもありがとうございました.by ロバート

授業への要望,聞きたい話,質問

大橋先生からの回答です.

羽をもつ動物は種類によって羽の形状が違うのか

この場合の羽は「羽毛」ということだとすると、現生の動物で羽毛を持つものは鳥類しかいないのですが、鳥類でも種類や、1個体の中で羽毛の形状が違っています。

例えば、ペンギンの羽毛は、飛ぶために使われるような羽毛ではなく、もちろんあの羽毛があっても飛ぶことは無理でしょう。飛ぶことのできる鳥の翼には「風切羽」という羽軸から非対称に羽枝(翼の面にあたる部分)が伸びている羽毛があります。羽軸に対して、生えている羽枝が非対称(生えている長さが羽軸の前と後ろで違う状態)だと、断面がちょうど飛行機の翼のようになり、空気力学的に揚力が得られる形状となります。また、飛べることのできる鳥類でも、お腹や後肢の羽毛は「綿羽(ダウン)」という"ふわふわな"羽毛ですし、尾羽などは「正羽」という羽軸から羽枝が対称に生えている羽毛をしています。

クジラやイルカも単弓類なのか

今生きている哺乳類は全て、単弓類から進化してきていると考えられています。ですので、現在の哺乳類に単弓類という呼び方はあまり適当ではないですけれど、進化的に見ると哺乳類の祖先は単弓類だったと言えます。単弓類の中から、哺乳類の祖先が出現し、長い時間をかけて、クジラはクジラのように、イルカはイルカのように、ゾウはゾウのように、サルはサルのように・・・それぞれ形態を変化させて進化してきたと言えると思います。

キヌタ骨、ツチ骨の働きと、恐竜などの方形骨、関節骨の働きの違いはあるのか

キヌタ骨、ツチ骨、アブミ骨は耳小骨と呼ばれる鼓膜の内側にある骨のことになります。鼓膜に伝わった振動がこの3つの骨を介して、内耳に伝わり、それが信号として脳に伝わることで、我々は音を認識しています。爬虫類では、アブミ骨にあたる耳小柱(じしょうちゅう)しかありません。爬虫類では、キヌタ骨は後頭部を構成する方形骨、ツチ骨は下顎の後ろにある関節骨であることが知られています。方形骨と下顎の関節骨やその周りにある骨から、彼らの顎関節は構成されています(皆さんにお配りしたプリント「講義資料(4)」の恐竜の頭骨を参照)。

爬虫類から哺乳類への進化の中で、下顎は、歯が生えている歯骨だけが大きくなって、その他の骨は後ろの方へ縮小退化していったと考えられており、その形態の変化の中で、方形骨や関節骨が耳の構造として取り込まれていったのだとされています。

大橋先生が研究や勉強をしてきた中で最も驚いた形態の変化はなんですか

・ 恐竜だと、鳥脚類という仲間のハドロサウルス類の頭の形があまりにも多様であることに驚きました

・ 他に、講義でも紹介しましたが、羽毛恐竜のミクロラプトル・グイは論文を読んだときに、後肢にも羽毛が生えていることに驚きました

・ 恐竜ではないですけど、同じ中生代の爬虫類の翼竜のなかにニクトサウルス(Nyctosaurus)という生物がいます。「Nyctosaurus」でグーグル画像検索するといくつか復元図を見ることができますが、この翼竜の頭の形にも驚きました。

・ アンモナイトの中にいる「異常巻き」と呼ばれているアンモナイトの形を見たときも驚きました。しかもそれらの巻き方に実は規則性があったということを知ったときも驚きました(詳しくはロバート先生に伺うとよいでしょう)

・ いろいろな骨を生物が持っているなーという点で驚いたのは講義でも紹介した長さ60 cmにもなるセイウチの陰茎骨を知ったときでした。