東京都市大学 地学1 2009.11.05 第7回 陸へ −地球進化4:生物の陸上進出,植物の進化,脊椎動物の上陸

第7回 生物の陸上進出

授業の概要

今回は,顕生代における海洋における捕食者の変遷について述べ,その後,特に植物による陸上進出について講義を行いました.

古生代はウミサソリ(鋏角類)や魚類が捕食者として台頭しました.中生代には陸上進出したハ虫類が海に再進出して,首長竜や海トカゲ(モササウルス)などの捕食者となりました.そして,新生代にはカニなどの甲殻類や海に再進出したほ乳類などが捕食者になりました.生物界では食物連鎖の高次に位置していた生物も時代によって大きく変化しています.

生物の陸上への進出に関しては,まずは,陸上が生息に適した環境になる必要がありました.もともと,地球には大量の宇宙線が降り注いでいます.現在では,宇宙線はオゾン層によって防がれていますが(それ以外にも地球磁場などが不せいている),もしオゾン層がなかったら生物は現在でも陸上に住めなかったでしょう.それが20数億年前からシアノバクテリアによって放出された酸素が徐々に大気に蓄積し(酸素が放出された当初は海洋中に含まれていた2価の鉄などの還元物質の酸化に利用された),カンブリア紀の始まる前にはオゾン層が形成される酸素濃度が大気にあったと考えられています.このオゾン層の形成によって,生物が陸上に進出することが可能な環境的条件が整ったと言えるでしょう.

さて,では生物自身は陸上進出にどのようなことに適応する必要があるでしょうか.

生物が陸上に進出するにあたっては,重力,乾燥,空気中でのガス(二酸化炭素や酸素など)交換などへ適応する必要があります.植物の場合はクチクラが強靱な体を支える支持組織の形成に役立ちます.クチクラで補強された維管束は,体の支持組織である一方で,葉などの先端部にまで水分を運ぶパイプの役目もしています.空気中でのガス交換のための気孔も獲得し,陸上生活へと適応していったのです.動物の場合は,手足などの骨格組織による重力への適応,鰓呼吸から肺呼吸へと変化させて空気中でのガス交換を実現しています.

植物の上陸はオルドビス紀の末頃だと考えられています.動物の上陸時期はシルル紀末だと考えられていますが,確かな化石の記録はデボン紀初期から現れます.

配付資料

配付資料は2枚ありました.植物の系統についてが1枚と,出席カードと捕食者と被食者の割合の変化を表した図がセットになった1枚の計2枚です.

参考となる本など

植物のたどってきた道.西田治文著.1998. (NHKブックス)

生物の科学 遺伝 別冊No.12 「地球の進化・生命の進化」中の生物の上陸の章も参考になります.

授業への要望,聞きたい話,質問

なぜ昔いたような巨大な生物は今はほとんどいなくなってしまったのかと思った.

確かに今の海に首長竜やモササウルスがわんさかいたらさぞ楽しげな海だったでしょうね(海水浴は恐ろしくてできなかったでしょうし,そもそも漁業が命がけですね).

体のサイズが大きいと言うことは,それだけ餌の量も大きくなります.絶滅事変などが起きると,餌がより多く必要な大型の生物は絶滅しやすかったのかもしれませんね.

メタンガスを生み出す生物が深海にいると言っていましたが,深海の生物は酸素濃度が充分足りていたのでしょうか?シアノバクテリアのような酸素を作り出す生物って深海にもいたんですか?

まず,メタンガスを生み出す生物はメタン生成菌というアーキアに属する微生物ですが,メタン生成菌は絶対嫌気性の微生物です.つまり酸素がある環境では生きることができません.そして,メタン生成菌は二酸化炭素と水素からメタンを生成しますので,酸素を必要としないのです.

深海の酸素濃度についてですが,一般に水深100m−500mぐらいは酸素濃度が極めて低くなりますが(酸素極小層),それ以深の酸素濃度は海洋表層と大差ないレベルです.ただ,これは深海にシアノバクテリアがいるわけではなく,海洋表層の酸素が拡散や海洋の鉛直混合によって深海にまで到達しているからです.酸素極小層は,その深度で多くの生物による有機物の消費に酸素が利用されて枯渇するために起きます.

毒を持つ生物も化石から読み取ることはできますか?

これは難しいでしょうね.毒を持つ独特の器官が化石に残りやすければ可能性はあるでしょう.また,毒の化学成分が地層中に残れば,化石でも毒をもっていたかわかる可能性はあります.とはいえ,本当に残りうるか,そのような研究があるかどうかも私は知りません.

スライドの写真やDVDなどがたくさんあって面白かったです.最初の画像はCGだと思いませんでした.

あの写真はChased by Sea Monstersという本から取りました.英語版ですがなかなかわくわくさせられる本です.

腕足貝はどうやって繁殖活動をしたと考えられているのですか?

二枚貝と同じように放卵・放精をしていると私は思っていますがきちんとは知りません.少し調べてみます.

大型の魚や恐竜など結構怖そうな形の動物がいたのでこの時代にいたらすぐに死ぬと思った.

私も死ぬと思います.