東京都市大学 地学1 2009.9.24 第2回初期生命


第2回 初期生命

今回の授業では38億年前の地球最初の生命の痕跡からシアノバクテリアによる生成物と考えられるストロマトライトという縞状の堆積物などについて講義しました.また,酸素発生によって,それまで海洋中に高濃度で存在していた還元型の鉄が酸化鉄として海底に沈殿し,現在我々が鉄鉱石として採掘している縞状鉄鉱床が形成されたことを説明しました.次回は,この酸素を利用する生物が地球上に現れてどうなったのかについて講義を行います.

配付資料

ワークシート:先カンブリア時代用のワークシート

授業への要望,聞きたい話,質問

同位体比と半減期の違いについて.半減期ではだめなのか?

いい質問です.今回は38億年前の堆積岩中に含まれるグラファイト(炭素で構成されている.ダイヤモンドと同じ組成だが,結晶構造が異なる.ちなみに,全然輝いていない・・・)の炭素同位体比(13Cと12Cの比)を元に,この炭素が生物起源であるという話をしました.半減期は放射性同位体に使われる用語ですが,まずは同位体について説明します.

同位体とは,陽子の数が同じで,中性子の数が異なる原子を同位体といいます.例えば授業に出てきた炭素の場合は,陽子の数は6個ですが,中性子の数は6個,7個,8個の場合があります.つまり,炭素には中性子の数が異なる3つの同位体が存在すると言えます.それぞれの同位体は,陽子の数と中性子の数を足した数を原子の前につけます.さきほどの3つの同位体を持つ炭素の場合12(6+6)の炭素同位体と,13(6+7),14(6+8)の炭素同位体があるというわけです.書き方としては,それぞれ12C, 13C, 14Cと書きます(ちなみに,数字は小さく上付で表します).

さて,この同位体の中には,安定なものと,不安定なもの(時間がたつと別の原子になる)があります.安定なものを安定同位体(Stable Isotope),不安定なものを放射性同位体(Radio Isotope)といいます.炭素の場合,12Cと13Cが安定同位体で,14Cが放射性同位体です.

いよいよ半減期の話に近づいてきました.放射性同位体の14Cはベータ線(電子)を放出して中性子が陽子に変わるベータ壊変を起こします.これによって,陽子の数炭素の場合は本来6であったものが,7に変化します.中性子は8個から7個になります.つまり,陽子が7個で中性子が7個の原子の誕生です.陽子が7個ですから,14Cは窒素(14N)に変化したわけです.この壊変のスピードは原子により異なりますが,各原子ごとに一定です.そして,ある時の放射性核種(放射壊変する前の放射性同位体)が放射壊変を起こし,放射性核種が半分の量になるのに要する時間を半減期というわけです.ようやく半減期が出てきました.

この半減期,原子によって異なるといいましたが,炭素の場合は,5730年です.つまり,5730年経つと,元の放射性同位体の量が半分になります.さらに5730年経つとそのまた半分になるわけですね.つまり,元の量と現在の量がわかれば,何年経過したのかがわかるわけです.これが放射性同位体による年代測定で,下の質問にも関連しますが,何年前という数字が出てくる理屈です.

話を元に戻します.質問にあった半減期ではダメなのか,に対する答えです.この質問を言い換えると,38億年前の炭素が生物起源かどうかを知るのになぜ13Cと12Cの同位体比を利用し,14Cの半減期を用いた放射年代法を使わないのか?となると思います(私が質問を誤解していたらごめんなさい).

この質問に関しては,放射性同位体の量をいくらはかったところで,それが生物起源か否かの答えがでません.でるのは年代ばかりです.一方,13Cと12Cの同位体比は,炭素の起源を推定することに使え,その炭素が何から(例えば火山ガスなのか?メタンなのか?生物の体なのか?)由来したかを推定することが出来ます(細かく言えばいろいろ問題もありますが).

これで答えになったかな.

そうだ,一つ忘れていました.そもそも,14Cの半減期は数億年とかいう長大な時間スケールに対してはあまりに短くて,そもそも年代測定に使えません.数億年スケールの年代測定にはウランなどの数億年以上の半減期を持つ放射性同位体を利用する必要がありますが,グラファイトにはウランなどの原子は入っていません.

※下の質問への回答も参考にしてください.

生物の起源や存在の可能性については今日わかったが,今一番の疑問なのが,どうして○○億年前というような推定ができるのか?その時間の基準がとても知りたい.また,地球誕生などがどうしてくわしく推測できるのか気になる

これもいい質問です.

どうして38億年とかそういう年代がわかるのか.不思議ですよね.

まず,年代には「相対年代」と「絶対年代」があります.相対年代というのは,白亜紀とかジュラ紀とか,第四紀とかです.この時代の定義自体には,基本的に,○○年前とか,そういう数字上の年代は決められていません.その地層から産出する化石の種類によって白亜紀とかジュラ紀とかが決まっています(ただし先カンブリア時代については異なるので注意が必要).

一方,数字で年代を表しているのが絶対年代です.この数字はどこから出てくるかというと,上の質問に書いたとおり,放射性同位体を調べることで年代を推定できます.上に書き忘れましたが,現在の量は測定すればわかりますが,元の量はどうやって調べるのかという問題があります.これはいろいろ便利な仕組みがあって,元の量もわかることになっています.これについては,また今度解説します.そういうわけで,古い岩石の中に含まれる放射性元素を調べると,○○年前というのがわかります.

※上の質問への回答も参考にしてください.

もう少しゆっくり話してください.

もう少ししゃべるスピードを遅くして欲しいです

なるべくゆっくり話そうと心がけているのですが,ついつい早口になってしまいます.気をつけます.

このプリント(毎回実施のミニテスト)をはじめの方に配って欲しいです.

今日は配るのを忘れてしまいました.通常は授業の真ん中ぐらいに配るようにしています.

パワーポイントをもう少しゆっくりお願いします.

はい.

部屋が暑いです.

私もいつも暑いです.立ってずっとしゃべっているからだと思っていたのですが,部屋が暑いのですね.暑いと思ったら遠慮なくエアコンの設定温度を下げるか,窓を開けるかしましょう.省エネも重要ですが,快適に勉強することも重要です.

パワポの資料の字が細かくよみづらい.

なるべく大きな文字を使うようにしますが,できるだけ前のスクリーンのそばに座ってください.

(評価での)出席,テスト,レポートの点数の比率は?

ほぼ均等に割り振る予定ですが,厳密なものではありません.最終的な結果を見て総合的に判断します.毎回の授業で出しているミニテストみたいなものについても,どれくらいきちんと書けているかを見ます.良く書けていたり,良い質問をしていれば加点の対象になります.